髭に関して

エッセイ

会社で喫煙所に行くと、特に知り合いではないが喫煙所で良く会うというだけの顔見知りが何人もできる。
特に会話をするわけでもないのだけれど、なんとなくその人たちの髭の伸び具合に目がいってしまう。
というのも社会人になるくらいの歳になればその人が髭がどのくらい伸びやすい人なのか何となく見るとわかるからだ。
個人的に一番気になるのは、あまり髭が伸びやすくない体質だけれど頑張って伸ばしている人だ。
もちろん好みはあるだろうけども男というのは髭をたくさん蓄えたいという人が多いのではないだろうかと思っている。なので彼らの気持ちはよく分かる。
あまり髭が伸びやすくない彼らが頑張って髭を伸ばすとどうなるかというと、まずとてつもなく髭が薄い、そしてやたらと長い。一本一本も「THE 髭」な感じの根深く硬い、どことなく銅線のごとく艶のある感じではなく、不用意な位置から一本だけチョロリンと生えてきてしまう謎の毛のようにとても細く、儚く、弱々しい。
そしてそれを頑張って伸ばすものだから長さだけはそれなりにあるのだけれど、森のように茂っているのではなく、雑草が行き場なくひょろーんと伸びているようで、なんだか切なさすらおぼえてしまう。

そんな自分の髭はどんなものかというと、森のように茂るわけでもなければ、行き場のない雑草のような感じでもないといった、なんとも中途半端な濃さである。
自分も御多分にもれず髭は森のように茂らせたいタイプなので、この髭はどうにかなるまいかと日々自分の髭の行く末を案じている。
自分は大学を卒業するあたりからおでこがなかなか広がってきていて、北北東、西と順調にその勢力を拡大してきている。そんなハンディキャップを背負ってしまったのだからもはや爽やかなカッコ良さよりは、ハゲているのすらも似合うダンディな、渋み、色気のある男路線を目指そうと自分なりに方向性を定めた。
渋み、色気のある男といったらやはり髭は必須だろう。
にしても決して濃いとは言い難い髭なので、最近はネットで髭が濃くなる方法などを調べていた。
髭用の育毛剤なるものもあるらしいのだが、なんだかドーピング感があってそこに手をつけるのはまだまだ気が進まない。
となると科学には頼らない方法で行くしかない。さらに検索を進める

「髭 伸ばす 方法」

あまりにも直接的なキーワードしか浮かばなくて恥ずかしい。
検索窓に一度打ち込むと次からもれなく予測変換で出てきてしまうのであまり人には見られたくない。
「巨乳 AV」と検索したのがばれるより恥ずかしいかもしれない。

しかし色気あるダンディーな男になるためには一筋縄ではいかない、更に向かう道はいつも複雑で一直線に伸びているとは限らない。そんなこんなで色々調べた挙句に一番出てくるのは

「髭剃りで剃る」

うっ、
髭を濃くしたいのに、その一番の方法が「髭を剃る」だと…
楽して稼ぐにはまず最初に「努力」が必要、的なことだろうか。なんと…
自分が求める物にいち早くたどり着くには、一番遠く、そして困難に見える道を行け、ということだろうか。なんだか急に哲学的だ。

それでもやはりネットの力を信じることにした自分は最近週に一度は髭を全剃りすることにしている。どうやら髭剃りは多少なりとも肌を傷つけ、髭というのは本来自分の肌を守るために生えてくるものなので、剃った部分を守る、いや守らせてくださいと言わんばかりに髭が生えてくるらしい。そしてそれを続けることによってどんどん髭が濃くなっていくのだという。
確かに、なんとももっともらしく聞こえる。

髭を伸ばす、というより髭を強くする。そんな意識でのぞむといいかもしれない。
そうなると自分の顔はあくまでキング(王)であり、髭はそのキング(王)を守るナイト(騎士)だと考えると自分の顔面に一つの壮大な物語が生まれて楽しい。

ちなみにいつも剃るのは金曜の夜だ。全剃りだ。
金曜の夜にナイト達を全員なぎ倒して鍛える。彼らは「うわぁーー」と言いながらもどんどん強いナイトに成長し、いつしか立派な髭になっていくわけだ。
ただ、髭がなくなるとなんだか自分の顔が薄くなりすぎて、それこそ素っ裸にされたような気がしてなんだか恥ずかしい。だからあまり人に会わない土日の前の金曜に髭を剃る。すっぴんの女の子がマスクをしたくなるのがうっすら分かる。
とはいっても土日は自分の中でキマッテルぜなファッションで外出したい気持ちもあるし、もちろん髭を蓄えた顔でいたいので微妙にジレンマがある。でも平日の方が圧倒的に人と接するので平日に髭へのウェイトを高める事にした。

と、ここまで書いたところで一体自分は何を書いているんだろうとふと思ったのだが、ここ最近を思い起こすと髭のことばかり考えていた。あまりにも何も起こらない日常を過ごしていると全く意味のないことばかり考えてしまうから恐ろしい。
と思いつつもこの髭への異常なまでの執着はあと二、三週間は尾を引きそうだ。

理想は頰まで髭が生えてる感じだ、山田孝之がたまに異常な程髭が伸びてる時のあの感じだ。
X-MENのウルヴァリンのようなあの感じだ。
あそこまでいけばおでこが結構広くてもなんとなくプラマイゼロみたいな感じがするだろう。しないだろうか、どうだろうか。
あとカイゼル髭みたいなのもちょっと憧れている。最近、特に面白くもないけどNetflixの「クィア・アイ」を見ていて、この番組はゲイの五人組がイケてない男女の身なりとかお部屋を改造して、
いんやー、ファッションやインテリアが変わると、なんだか自分に自信が持てて内面も変わっちゃうネ(涙)」
最後には皆泣いて、なぜかグループハグ(複数人でハグすること)みたいなお決まりのパターンを死ぬほど繰り返す番組なんだけれど、その五人組のゲイの1人がカイゼル髭にしていてなかなかカッコよくて、カイゼル髭も良いですなぁと思った。

でも確かに自分が髭にここまで執着しているのは、髭が茂っている時の方が気持ち良くいられるし、自信を持っていられるからかもしれない。しっかりとした武装をするみたいな、そんな感じだ。
生やしたいけど本当にうっすらしか生えない人もいるわけだ、そう考えるとこれは人それぞれが違う才能を持つように自分に特別に与えられたもの、というか毛なわけだから、ここ最近自分が髭に思いを巡らせた時間は、とても意義のある時間だったのかもしれない。
きっとそうだ、そう思うことにしよう。
髭の生える体に産んでくれた母と父に感謝したいマジリスペクト。
ちなみに父はかなり広域に髭があるタイプなので、自分も今後成長の見込みはあると思っている。
それからかなりおでこも広いのでそこの部分に関しては成長の見込みというか懸念というか複雑な心境を抱いている。

そういうわけで
実は髭、大事。
そんな結論で今日は終わりにしたい。

では

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