時代に取り残された二人の男を悲しくも優しく包む西部劇「明日に向かって撃て!」

映画

1969年公開の「明日に向かって撃て!」を観ました。
新作映画のことをいくつか書いていましたが、時には名画と言われるものも見ています。
しかし名画と言われる作品を見るときは、なんとなく我慢タイムと思ってしまう部分が未だにあるのですが、今回はさらに我慢を重ねて、DVD特典の本編解説も見てみました。

結果としては、思った以上に感じることが多かったです。
そりゃ監督や撮影監督が解説をしてくれるわけですから、全体のテーマだったり、シーンの狙いだったり、苦労した場面なんかを聞くと、全く違った視点で映画を観る事ができます。
時間はかかりますが、こうやって一本の映画を深く観るというのも良いものですね。

下記、簡単に概要です。

監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
出演者:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス
主題歌:「雨にぬれても」-B・J・トーマス

アメリカンニューシネマの代表作として知られる作品。
ブッチ(ポール・ニューマン)とサンダンス(ロバート・レッドフォード)という実在した強盗団の2人の男にフォーカスを当てた西部劇。

どんな時代にも終わりが来ます。
馬車の運転手は自動車が普及すれば職を失い、鉱夫は最新の機械があれば不要になる。
これまでの常識が一気に覆され、振り向けば新しい時代がすぐそこまできて、肩をポンとたたかれます。

「明日に向かって撃て!」はまさにそんな、時代に取り残された男達を悲しくも優しく映しとった西部劇です。

ニューマン演じるブッチは頭がキレる強盗団のリーダー。レッドフォード演じるサンダンスは凄腕のガンマン。互いにその頭脳と、銃一つで開拓時代を生き抜いてきました。

左がレッドフォード演じるサンダンス
右がニューマン演じるブッチ

序盤では彼らの生き方がコミカルに、生き生きと描かれていて、ニューマンとレッドフォードがとても魅力的に見えます。
ちなみにこの頃ニューマンは既にスター俳優でしたが、レッドフォードはまだまだ無名で、
はじめサンダンス役はスティーブ・マックイーンにオファーがあったようです。

「雨にぬれても」が流れる有名なシーンや、札束が舞うとても美しい強盗シーンが続き、彼らの黄金時代が描かれます。特に「雨にぬれても」の楽しそうなニューマンとキャサリン・ロスの自転車シーンなんて幸せそのもの。
自転車に異常にテンションが上がるニューマンが、スーパーマン乗りや後ろ乗りという曲芸まで披露する始末。

Butch Cassidy and The Sundance Kid 明日に向かって撃て / 雨にぬれても

しかしそんな幸せの背後に、警察の追跡隊の不穏な影が忍び寄ります。
追跡隊は執拗にブッチとサンダンスを追いかけ回し、どんなに引き離しても追いかけ続けます。
いつもの巻きのテクを使っても彼らはかいくぐる、これまでうまくいっていた手段が全く通じません。
そう、彼らはブッチとサンダンスの黄金時代を終わらせにきた、2人の常識を覆しに来た、2人のやり方に終わりを告げに来た存在として描かれています。
つまりは追跡隊は19世紀のやり方に終わりを告げに来た”20世紀”という新しい時代のメタファーといえます。

いくら逃げても、馬が立ち上がらせる砂煙、月夜に浮かぶランタンの灯が、遠く離れた荒野から近づいて来ます。
追跡隊の姿はブッチとサンダンスの視界から消えることなく何日も2人は逃げ続けます。
このシーンはとても怖いです。近くにいないものなのに、近くにいるよりも怖い。まるで振り払っても振り払っても拭えない心の底にある正体のわからない不安のような怖さです。
人間が根源的に持つ将来への不安や、自分が誰かに取って代わられる、そんな不安を表しているといえるかもしれません。

一旦は難を逃れたブッチとサンダンスは、キャサリン・ロスの演じるエッタとボリビアへ逃げて平穏な暮らしをする事を決めます。
新しい時代に飲み込まれないように、緩やかに自分たち自身が変わらないといけないことに気付き始めるのです。

ボリビアに移った彼らでしたが、依然自分たちのやり方に固執してしまいました。
まともに人生をやり直そうとしても、どうしてもうまくいかない、体に染み付いて拭いきれないこれまでの生き方や考え方が彼らをそうさせます。
プライドや年齢を言い訳に、まともに生きることから逃げ続けます。
農作業をすればいいと言われれば身体がもうもたないとかいう始末です。

しかしもちろん、追っ手は諦めていませんでした。

そしてついに2人は飲み込まれてしいます。
今度はまた別の地に行き、更生する事を誓い、時代が変わった事を認めた、
まさにその直後に。。。

監督のジョージ・ロイ・ヒルは作品解説でブッチとサンダンスが死ぬ姿を見たくなかったと言っています。

それはブッチとサンダンスというキャラクターへの愛、そして時代に取り残されてしまった悲しい人間への優しさだと思います。この映画はそんな彼の優しさで包まれています。
シリアスで退廃的なテーマを持つアメリカンニューシネマの中でも、明るく、希望が見える映画だと思いました。

自分もまだまだ若いつもりでいるけれど新時代人間が確実にいる事を思い知らされる映画であり、しかしそれと同時に、「でも大丈夫だよ」と優しく言ってくれてるような気がしました。
もちろん、結末はそんなに明るいものではないですが、、、

解説にあったわけではないのですが、劇中でニューマン演じるブッチが、あんなに気に入っていた自転車を「この役立たずが!!」みたいな感じでブチ切れて投げ捨てるシーンがありました。個人的にはこのシーンが時代に取り残された人間であるブッチを、とてもよく表しているなと思いました。
自転車はこの時代では新しい乗り物、いわば新時代のテクノロジーを表しています。
ブッチはそれを無下に扱い、開拓時代の象徴とも言える馬にまたがり、命の最期へと歩みを進めます。

解説を観た事で、そんなところにも目がいくようになりました(別に自転車にそんな意味は込められていないかもしれませんが)。
今後も解説の特典があったら観てみようと思います。
皆さんもいかがでしょうか

「明日に向かって撃て」は下記で観ることができます(¥199)
※レンタル期間は30 日間で、一度視聴を開始すると48 時間でレンタル期間が終了します。

では!

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