「彼女がその名を知らない鳥たち」映画レビュー(ネタバレ、考察)ちょっと異常な日常、その先に…

映画

先日、香取慎吾主演の「凪待ち」を見てきました。
凪待ちの監督といえば白石和彌監督ですね。
そしてタイトルの「彼女がその名を知らない鳥たち」の監督も白石和彌監督です。
というわけで、「凪待ち」も書きたかったんですが、よくよく目にする映画評論家とかの「関連作」追いみたいなのをやってみたくてNetflixで見れた「彼女がその名を知らな鳥たち」を見てみることにしました。

近年恐ろしいほどのスピードで作品を発表している白石監督。
他に代表作と言えば「凶悪」(2013年)、「日本で一番悪い奴ら」(2016年)、「狐狼の血」(2018年)、とかですね。いっぱい作るしいっぱいヒットさせてるし、まぁすごい人ですよね。

個人的には「凶悪」が特に印象的です。
今は亡きピエール瀧さん(亡くはない)さんとリリー・フランキーさんの演技、怖かったですねー、そしてなぜか池脇千鶴さんにも恐怖が伝播するあたり、もう嫌!ほんとこういうの嫌!こんな現実見せつけてこないでという闇のような作風がとてもセンセーショナルでした。

は漫画の「闇金ウシジマくん」とか非常に世界観近いですよね。
ああいった嫌なもの見せつけられてるんだけど、もっとくれ!もっとくれ!みたいになってしまう感じ。
自分が本当に欲しているものは実は綺麗なものなのではなくて、なんかこう、ぐちゃぁっとした、おどろおどろしい物なんじゃないかと思わせるあたり、
もう嫌ですねぇ、ほんとに嫌です。
嫌な物+自分の本性みたいなものwを見せられるみたいで本当に嫌です。
でもまぁつまりは本当最高てことです。もう逆に最高。
ここまで嫌な物なのにどうしても見たくなって止まらなくなってしまう物ってのはつまり作品として最高という他ないのです。完全に一つの魅力に昇華しているんです。

と、前置きが長くなってしまいましたが、キャストとあらすじをご紹介します。

「彼女がその名を知らない鳥たち」
監督:白石和彌
脚本:浅野妙子
原作:沼田まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち」(幻冬舎文庫
出演:蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊、赤澤ムック、村川絵梨、中嶋しゅう

あらすじ
働かず、家で何もしない十和子は(蒼井優)は同居人の陣治(阿部サダヲ)から生活費をもらい暮らしていた。
建設業で働きいつも顔はススまみれの陣治を過剰なほどに嫌悪する十和子だったが、陣治は十和子に無償の愛を尽くしていた。
ある日十和子が昔交際していた男黒崎(竹野内豊)からもらった大切な時計が壊れてしまう。そのクレームの電話をきっかけに時計店の担当者の水島(松坂桃李)と体の関係が始まる。
壊れた時計がまた動き出すかのように、黒崎との過去の記憶もよみがえり、十和子、黒崎、陣治が目をそむけていたある真実もまた静かに動き出してしまうのだった…

ちょっと異常な日常の延長線上

白石和彌監督の映画って、なぜかど頭から引き込まれる作品が多いと思います。
あくまで私見ですが、そこにはちょっと異常な日常の延長が垣間見えるからだと思うんですよね。

一見するとまぁ日常の風景なんですが、なぜか異常に「汚い」とかなぜか異常に「暗い」(雰囲気として)感じで
あ、これから描かれる人々はもうすでに少しどっかが「壊れてる」んですね
というのが瞬時にわかる感じがするんです。

言うなれば会社に行く途中、いつも通る道でみる異様に汚い家とか、ゴミ屋敷とか、いつも子供の鳴き声が聞こえるとか、日常ではついつい見落としてしまいがちな「ちょっとした異常」(あるいは異常の萌芽が見られる感)が舞台になっている感じ。

そんな「異常」をいつも最初に持ってくるもんだから、どうしようもなく引き込まれてしまう気がします。
うわ、絶対自分はこんな世界に巻き込まれたくねーな
そんな日常。でも確かに自分の周りに存在している嫌な日常。
そんな嫌悪感を否応無く感じさせるのが白石監督は本当に上手いと思います。

はい、こっから異常の入り口でーす!!
こっから異常になってく感じ見せまーす!!

となりゃ、そりゃ見たくなるのが人間ですよね。
この作品でも、汚い部屋の中で蒼井優演じる十和子が自分の壊れた時計のクレームをネチネチと電話するシーンから始まります。

蒼井優演じる十和子(とわこ)

嫌ですねー、こんな人。
こんな人になりたくない、こんな生活絶対したくない。
はい、そう思った時点でもうこの映画に取り込まれています。
この後の転落を共に楽しむしか、もうなす術はないのです。
ちょっと異常な日常のその先を、半ば無理やりに見せつける。これぞ白石和彌映画です。

そんなとこに家に帰ってくる同居人が阿部サダヲ演じる陣治、ですからね。

阿部サダヲ演じる陣治(じんじ)

あ、阿部サダヲが出てくりゃどんな話でも楽しい感じになっちゃうじゃん
と思いきや、こいつが鬼のように汚い男(容姿、振る舞い、飯の食い方が)な訳ですから。
そりゃもうダメ感、もうイヤ感、抜け出したい日常感がすごいわけですよ。
きっとこの2人はマンションの中でもワケアリカップルとして見られていたんではないかと思います。

このあたりね、アパートとかマンション住んだことある人なら居たと思うんですよね、なんかこの人たち不穏、みたいな。
きっとなんか闇あんだろーなー、まぁ自分には関係ないけど。
みたいな。

ここらへんのちょっと異常な日常の描き方がやはり素晴らですね。

ミステリーテイストのストーリーテリング

「彼女がその名を知らない鳥たち」の原作はミステリー小説です。
この映画でも冒頭の引き込まれ演出に加え、
あれ、この映画、実はミステリー?
な展開になっていくので映画としてのスピード感がすごくいいです。
もうグイグイ引き込まれて、更に謎もどんどこ挿入されて行くので途中で暇することはありません。

十和子は時計店の担当イケメン店員である水島(松坂桃李)と不倫関係になっていきます。

松坂桃李演じる水島

2人の関係はばれないんですが、十和子の昔の恋人黒崎(竹野内豊)と十和子がまた関係を続けてんだろ!!みたいな展開になっていきます。

竹野内豊演じる黒崎

今は失踪したとされ、警察に捜索されている黒崎。
度々インサートされていた黒崎との間に何があったんか、っちゅう感じで小出しで語られていきながら、そしてそれがミステリーとしての話の大きな推進力となってストーリーは進んでいきます。

ここらへんの進み方がとてもテンポいいのでね、普通にエンターテインメント映画としても面白く見られるあたりです。
白石監督ってあんまりミステリー的な作品はないと思っていたんですが、思い返してみると話運びがすごい上手い方なんだな、なんてのも再認識しました。
本当見ていて飽きない作品が多いです。

あまりにもネタバレしすぎると面白くない映画だと思うので、ここではあまり語りませんが、白石和彌監督のどんよーりしたテイストだけではない、ミステリー的な部分もとても面白く見られる作品だと思います。

阿部サダヲの無償の愛、そして彼が与える最上級の罰

本作のクライマックスに関して語りますので見たくない人お伏せください。

阿部サダヲ演じる陣治は十和子のある罪をその身一身で受け止めます。
なぜそこまで陣治は彼女に対して無償の愛を捧げるのか、正直この部分は見ていてイライラする部分でもあります。
十和子という女はですね、こいつは異常な程自己防衛能力が高い女なんですよ。
働かずに人事のお金で生活しているし、異常なクレーマーという部分も被害者意識の塊とも見えるんですよ。挙句責められると自分の部屋に閉じこもる。

それでも十和子の姉である美鈴は十和子に対して結構ガンガン攻めて行くんです。
ここは見ているこちらも参戦したいくらいの感じで言ってくれるんですが、そこもいまいち甘いんですよね、、、もっと行けよ、殴れよこんなやつ、殴んねーとわかんねーぞこいつ。
みたいな気持ちになるんですが…

それでもね、やっぱ最後なんですよ
今までずっと十和子を無償の愛で、養ったり、浮気許したり、
そんでもって最後の最後にこれでもかってほどの無償の愛を見せつける阿部ちゃんがですよ!!我らが阿部サダヲが最後の最後に一発喰らわすんですよ。

無償の愛の代わりに、お前はこの後ずっと今まで守ってきた自分の罪を抱えて生きていくんだぞ。
そしてお前が守ってきた分だけじゃない、この俺も抱えて、この俺も背負って生きていんだぞ

という、この自己防衛女に対して最大の愛ともとれる、最大級の罰を阿部サダヲは与えるんですね。
彼の選んだ涙が出るほどの無償の愛と、最大級の罰。
この選択がねー、やっぱり喰らわせられますね。

この映画の感想を自分なりに整理すると

無償の愛について語りながらも、そこに生まれる相反した「何か」もちゃんとあるんだぞ、と。そこ忘れんじゃねーぞ!!

みたいな、そんなことを観た後に感じました。
その「何か」って何よ?と、それ聞かれると分からないし、多分答え無き問いだとは思うんだけれど、必ずしもこの映画のように「罰」ではないのかなとも思います。
この映画でも罰のような、罰ともとれない描き方だったので、そこは僕ら観客に投げかけられた一つの問いだと思います。

でも考えてみると、愛って面倒なものでもあるじゃないですか。
愛をもらう分、返さないといけない、みたいなのあるじゃないですか。
頼んでねーんですけどぉぉ!!迷惑なんですけどぉぉ!!
みたいな、そんな部分が愛には悲しくもあるんだなぁ。
と、そんなことも個人的には感じました。

まぁ何にしても、ミステリーと見せかけて、決してそれだけでは終わらないあたり、余韻がもんわぁ〜と残るというのもこの映画の良きところだと思います。
色々含めていい映画だったなと思います。

阿部サダヲコミカル集

この映画は蒼井優の演技(濡場も満載)がすごかったですが、なんだかんだ言っても阿部サダヲの演技もやはりよかったです。

阿部サダヲってもちろん他の役の演技の影響もあって、もうどんな役演じても面白くなっちゃうんですよね。
そこにいるだけで画面がどうしても真剣味を失ってしまうというか、良くも悪くもなんだと思うんですけど。

今回はそんな面白阿部サダヲの中でも特に面白かったセリフを挙げておくので、まだ見ていない方は下記のセリフを楽しみにして見てみてください

・うわぁ!!パンからクリームはみでてもうたぁ!!
・今シチュー作っとるやないかぁ!!
・タコパンテーか!?
・十和子さん!!メダカこうてきたで!!
・ボク、痛風やからウニ食べられへんねん

このあたりが個人的に面白かったですね、というか阿部サダヲが関西弁喋ってるだけで面白かったですね。
あと痛風だからウニ食べられないシーンでは、不意に場の雰囲気がシリアスになるんですが、そこで阿部サダヲが豚足食べてるんですね、食べているというかむさぼりついてる。
この時の豚足の生々しさが妙に不気味でしたね、恐怖の豚足演出でした。

そしてねこのシーン、ここもまた白石和彌ワールドが出てましたね、、、
うわ、この家族も壊れてんじゃん…
というね。こいつら取り巻く磁場どうなってんホンマ、、、
そんな細かい部分もほんと見逃せない部分です。

あと蒼井優の濡場シーンですね、普通ここかなりフィーチャーされる部分ですので必見です。もうヤッテ、ヤッテ、やりまくる!!やりまくりなんです。
咥えもありますからね、蒼井優の咥えですよ。
すごいですよこれは、フ○ラですよ。もう蒼井そらですよほぼ。

あと松坂桃李のラストもね、最高でしたね。最後っつうか全体にわたるクソ感、薄い感が最高!!

いたいぃ、いたいよぉぉ、

っていうとこね、いつまで画面にいんだよ!!って感じが最高でした。

というわけで随所に楽しみどころいっぱいなので是非是非見てください!!

Netflix、Amazon Prime入っていれば無料で観れます!!

では!!


コメント